刺繍屋ドットコム
刺繍の町、桐生から刺繍のプロの技を産地価格でお届けします。

ネット活用倶楽部 掲載

 

2003年9月8日 ネット活用倶楽部

■「豊富なコンテンツ=技術レベルの高さ」を感じさせる

ネットで刺繍の注文ができる「刺繍屋ドットコム」、ページ数が多い理由は、その事業形態にある。
通常のネットショップのように、商品を仕入れて販売という流れではなく、すべてが顧客オリジナルの刺繍製品を扱うため。実際に注文する製品をあらかじめ画像で見ることができないのだ。

そして、オリジナル商品を希望する顧客は総じて「こだわり」を持っている。
そのような顧客に納得してもらうには、豊富なコンテンツからその技術レベルの高さを感じ取ってもらい、「まかせて安心」という気持ちをもたせる必要がある。
そのために商品以外のコンテンツをも充実させ、さまざまな角度から好印象を醸成させている。

サイト内ページ数は、150ページを超える。
店長、石川由理香氏も堀田氏と同様に、「単に情報過多で、結果的に“見づらいホームページ”にならないよう心がけている」という。

▽刺繍屋ドットコム
http://shisyuya.com/

そして顧客によっても、購入決定するまでに必要情報が異なる。具体的にいえば、2つのタイプの顧客に対応したページ作りを目指しているのだ。

(1)必要最低限の情報を見て注文する顧客
(2)徹底的に情報を見て注文する顧客

(1)の即決タイプの顧客向けには、必要最小限の情報を提供し、すぐにクリックして注文ができるように、コンテンツをトップページから2階層以内におさえる構成にしている。

(2)の顧客向けには、(1)のページからさらに知りたい情報へと、奥に入り込めるリンクを埋め込む構成をとっている。

用意されているページ数は多いけれども、見た目はシンプル。
こんなくふうがほどこされているのだ。

数多いページの中で、訪問者の購入決定に強力に役立っているものは以下の2つ。

(1)サンプルページ
…同サイトでは「品質の良さ」が最大のウリ。
制作した作品をサンプルとして多く掲載し仕上がりを納得してもらえる。
出来上がりの質の良さと量を示すことで、他社との差別化を図っている。

(2)実績ページと「こんな刺繍できますか?」ページ
…商品が手元に届くまでは、どんな製品が出来上がってくるかわからないといった顧客の不安を解消。
過去に手掛けた製作実績は「安心感」付与に大いに役立っている。

▽オリジナルワッペンのサンプルルーム
http://shisyuya.com/sroom11.htm

▽過去の実績
http://shisyuya.com/jisseki.htm

同サイトには、芸術刺繍などの手のかかる本格的な高級商品も掲載している。
実際には芸術刺繍は、ネットでの販売は多くはないけれども、あらゆる刺繍を取り扱える「バリューを持つ」という点で大きな意味があると石川氏はその掲載の利点を説明する。
高級商品を扱っているという事実は、個人客だけでなく企業からの大きな注文を受けることに貢献しているという。

このように幅広い刺繍を積極的に取り扱い、総合刺繍ショップとしての地位を築いてきたことが功を奏し、現在の月間の売上額は400万円〜500万円(受注件数は月150件程度)を推移、2003年度の予想売上5000万円と好調に成長している。

刺繍業界全般を見渡すと、ここ1〜2年間で競合の刺繍会社のネット進出が加速している。
過当競争になりがちな状況であるが、石川氏は「競合会社の進出は当社にとってプラス面とマイナス面の両極面をもっている」と解釈している。
「一言で言えばプラス面の方が大きい」と強気だ。

それは、競合会社のネット上での増加は市場獲得競争が激しくなることであるけれども、むしろ、市場全体の活性化につながると見ているからだ。
以下の流れのように、多くの参入が有利に働く。

 <刺繍のネット販売ショップが増える>
        │・刺繍に関する情報が増える
        ↓
 <ネット上で刺繍を注文するポテンシャルユーザーの創出>
        │・「ネットで刺繍が注文できる」という
        ↓ ユーザー認知が確立
 <市場全体が底上げ、対象市場が拡がる>

けれども市場競争が激化する中では、あらゆる企業努力が必須。
それを怠っては、そのプラス効果をエンジョイできない。
実店舗では通常「地域一番店」に多くが来店するが、エリアの区分けのないネットでは、ユーザーはネット上でのカテゴリナンバーワンのショップに訪問する。

常に他社を一歩リードするための戦略と実行を続けてゆかなければ、自店を選んでもらえない。

■ネットは実店舗経営以上に経営力が必要

危機感はいつも持っている。

将来の安定は約束されないのだから、絶えず新しい展開を実施すること。
立ち止まれば、衰退の日々が遠からず訪れるのがネットの世界。
競争力強化のための毎日の作業の効率化をスタッフ全員の共通認識としている。

キーワードは「効率的な運営と効果的な戦略」だ。
そして、「刺繍の産地ならではの技と低価格」を全面に出したマーケティングを実践している。

2001年に桐生の商店街一等地オープンしたアンテナショップは、ネットショップの「管制塔」としての位置付けとなっている。
ここは販売拠点としてではなく、あくまでネットショップ専用のカスタマーサポート運営の拠点である。

この実店舗が当社の飛躍の大きなきっかけとなった。
刺繍の町桐生で、パートナー工場間とのコミュニティーの場としての役割も、今後はもたせてゆく予定。

石川氏はネットショップ運営での苦労について次のように語る。

ネットショップ運営の苦労はつきない。
「オンラインショップは安価に、手軽に、誰でも簡単に始められる」とよくいわれる。
けれども、それは「オンラインショップで成功を収める」ことは全く別次元の話。
確かにネット参入は敷居が低く、低コストで始められる。

けれどもネットショップで成功を収めるには、しっかりとしたコンセプトの元、綿密なマーケティング力と実行力、実店舗経営以上に経営力が求められる。

ある意味、実店舗で成功を収めるよりはるかに難しい。
毎日変わる市場環境に迅速に、且つ、柔軟に対応すべく「日々の改善、改革」が絶対条件となる。

また、「商品をネットで売る」という目先の目的だけでなく、ネット業界全体の流れを掴む情報収集力をつけることは必須。
自分の刺繍業界だけでなく、IT業界、ネット業界、経営全般を勘案し、物事を俯瞰できる知識基盤をもたずに成功
はありえない。
日々勉強の連続とネット販売のきびしさを語る。

ちまたには「ネット販売は簡単に稼げる」という楽観論があふれる(総じてノウハウ売りの顧客獲得のために)が、石川氏の言葉は、それをいましめるメッセージでもある。

サイトのコンテンツの豊富さは、単に「情報量が多い」というだけに終わってはならない。
サイト上の表現はショップの全姿勢を伝え、どのように自社商品、サービスが顧客に役立つのかを理解してもらうもの。多様化の時代、細分化される需要へ幅広く対応しようとすれば、伝えるべき情報も増える。

小手先のテクニックだけならば、誰でもすぐに真似できる。
けれども大切なのは、物事の本質をとらえ、それがどんなふうに顧客に役立つのかを体系化して伝えてゆけるかどうか。

“ほんもののネットショップ”と感じさせるところは、表現の細部にも抜かりな
く、運営者の細やかな配慮が施され、一流の味を出している。
 
 
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